تسجيل الدخول俺は今、リビングの壁に『踵』『お尻』『背中』『後頭部』をくっつけて直立し、お笑い動画を観てわざとらしく爆笑している。
うん。客観的に見るとキモイな。頭がおかしくなったのかと思われても仕方ない。
だが、これが柚希曰くリア充に成る為の第一歩らしい。1時間程前に遡る――――――――
「まずお兄ちゃんはコミュ力の前に色々足りてないの」
俺は真剣に柚希の言葉に耳を傾ける。
「まず、その猫背! リア充で猫背の人見た事ある?」
そう言われハッとする。
「居ない……な」
「でしょ?」そうか、俺はいつも派手な言動にばかり目が行っていたが、よーく思い出してみればみんな背筋がピンと伸びていた気がする。
「猫背だけで自分に自信が無い、なんか暗そうって思われちゃうの!」
なるほど。
「例えば、携帯ショップの店員さんいるじゃん? 色々なプランとか説明される時に自信なさげに猫背で説明されるのと、自信たっぷりに背筋をピンッと伸ばして説明されるのとどっちが納得しやすい?」
「それは、自信たっぷりに姿勢よく説明された方が安心しやすいかな」 「でしょ? それは学校という場所でも同じ事なの」なるほど確かに。
そう考えると姿勢って大事だな。「あと、表情も大事!」
「表情?」柚希は軽く頷いて「そう!」と言い、顔の横に人差し指を立てて
「お兄ちゃんが私に抱いてるイメージをもう一回言ってみて」
「それは、いつも笑顔で明るくて、人懐っこくて男子からも女子からも好かれてるイメージだな」さっきと同じ回答をする。
すると柚希は「そう! それ!」と言って俺の顔を指さす。「いつも笑顔でって言ったでしょ? お兄ちゃんは表情が硬いし、いつも口角が下がってるの。これって不機嫌とか暗いとかのマイナスイメージしかないんだよ!」
確かに俺はあまり表情豊かではないな。
でも口角が下がってるっていうのはどういう事なんだろう。「表情が硬いのは分かったけど、口角ってどういう意味なんだ?」
素直に疑問をぶつけてみる。
「口で言っても分かりずらいと思うから見せてあげる」
そういって「よく見ててね」といい、両手で顔を隠した。
そして「どう?」と言いながら両手をどける。「え? あれ?」
そこには見慣れた柚希の笑顔は無く、少し暗い感じの顔をした柚希の顔があった。
「じゃあ元に戻すね。今度は手で隠さないからよーく見てて」
そう言われ柚希の顔をみると、みるみるうちにいつもの柚希の顔になった。
なんだこれ? 魔法か何かか? と考えていると「どう? 何かわかった?」
と聞かれたので素直に答える。
「いや、さっぱり。 魔法でも使ったのかと思った」
「じゃあ、もう一回やるから今度は口元見ててね」と言われ、口元を凝視する。
そしてさっきの様に表情がコロコロ変わる。 そして気づいた!「あ、その顔はやっと気づいたね!」
「あ、ああ」いつもの笑顔で言ってくる。
「口角が上がってるのと下がってるのとでは大分違ったでしょ?」
「もはや別人だったな」そうなのだ。
口角が上がっている時の顔はいつもの明るい柚希の顔だが、口角が下がっている時の柚希の顔はなんというか、兄妹だからだろうか俺に似ていて覇気を全く感じなかった。「これで口角の重要性が分かったでしょ?」
「ああ。でも凄いな。いつも口角を上げてる状態で過ごしてるのか」俺が感心していると
「それはちょっと違うかな~。今のは意識して口角下げたけど普段は無意識で口角が上がってるんだよ」
俺は衝撃を受けた。
無意識で口角が上がるだと?「それ、俺に出来る様になるの?」
自信喪失気味に尋ねると
「努力次第で無意識に上がる様になるよ!」
俺はその言葉に食いつく
「どうすればいいんだ?」
俺が真剣に尋ねると
「常に爆笑してればいいんだよ!」
というブッ飛んだ回答がきた。
「爆笑って、それはどういう……」
俺が面食らっていると
「表情の次は姿勢だね~」
と、次の課題に話題をシフトした。
ハイペースなんじゃないかなぁと思いつつ柚希の言う事を聞く。「ちょっとお兄ちゃん、そこの壁に背中をくっつけて立ってみて」
俺は言われるがままソファーの後ろの壁に背中を付けて立つ
「これはどんな意味があるんだ?」
俺が尋ねると
「あ~、やっぱりか~。お兄ちゃんの猫背は筋金入りだね~」
と、はぐらかされた。
「お兄ちゃん、これから指示するから言われた通りに立ってみてね」
「あ、ああ」普通に立ってるだけだが柚希的にはダメらしい。
「まず、踵を壁に付けて」
「お、おう」言われて踵を付ける。
あれ? なんかキツイな。「踵が壁に付いてるから自然とお尻も壁に付いてるでしょ?」
「ああ」 「そしたら背中も壁に付けて」 「おう」くっ! さっきよりキツくなった。
「それで今度は後頭部も壁に付けて、そのまま顎を引いて真っすぐ前を見て」
言われた通りにする。
何だこれ! 滅茶苦茶キツイ!「キツイでしょ? これが本来の正しい姿勢だよ? キツく感じるのはそれだけお兄ちゃんの姿勢が悪かったってことだね」
これが正しい姿勢なのか! こんなにキツイとは!
「目の前にテレビがあるでしょ? 今からお笑いのDVD流すからその姿勢のまま1時間見続けて」
「へぁ?」驚いて思わず変な声が出てしまった。
「あとついでに表情も鍛えるから大げさに爆笑しながら見てね」
「1時間ずっと?」 「うん!」 満面の笑みで頷かれ、そしてDVDが再生された。 そして俺は慣れない姿勢のキツさに耐えながら爆笑し続けた。夜自室でくつろいでいると、スマホの通知音がなった。 今までの俺ではありえない出来事だった。 画面をみると『新島楓さんからグループに招待されました』 というメッセージと招待を受けるか受けないかの選択がある。 グループっていうのは複数人で会話をやり取りするんだったよな。 学校だけじゃなくプライベートもグループでいなきゃならないなんてリア充は大変だな。 しかし、画面をよく見てみると、招待されてるのは俺と水樹と及川だった。 何故この四人何だろうと不思議に思ったが、俺が悩んでいる内に皆が招待を受けた事が表示された。 やばい出遅れた。怖気づいてると思われるかもしれない。 慌てて招待を受けるを押す。 すると早速メッセージが飛んできた。〈佐藤君おそ~い〉〈こんばんは〉〈オッス友也、よろしくな〉 次々とメッセージが飛んでくるのでどうしたらいいか分からない。 一人一人に挨拶した方がいいのか? しかしチャット形式ならそれは必要ないだろう。 なので気になった事を聞いてみた。〈この集まりは何なの?〉 とメッセージを打ち込むと、新島が答える。〈中居って5月5日が誕生日だから誕生日プレゼントを今度の休みに買いに行こうというメンバーだよ〉 中居は端午の節句に生まれたのか。まさに男って感じに育ってるね。〈それなら田口や水瀬も呼べばいいんじゃないか?〉 俺がそう言ったら、今度は新島ではなく及川が口を挟んだ。〈それは駄目!〉〈なんで?〉〈えっと……〉 というやり取りをしていたら今度は水樹が〈実は及川は中居の事が好きなんだよ。それをその二人には知られたくないらしい〉 ビックリして言葉が出ないとはこの事か。及川が中居を好きだったとは……。〈ちょっと水樹、勝手に言わないで!〉〈グループに入ってるんだから説明しない訳には
鏡の前で表情の確認と髪型を整える。 もうすぐ実戦訓練としてめぐがやって来るからだ。 前回の時と違い自分で話題を探さなければならないので若干緊張している。『相手の事を話題にする』 と柚希から言われているが、今の所入学おめでとう! ぐらいしか思い浮かばない。 色々考えている内に玄関のチャイムが鳴る。 柚希が対応しているがどうやらめぐが来たらしい。 こうなったら覚悟を決めて当たって砕けろだ! リビングに入ると既にめぐが席に座っており、柚希はいつもの定位置に座っている。 俺とめぐが同時に見渡せる位置取りだ。「こんにちは、始業式振りだね」 と言いながらめぐの向かい側に座る。「こんにちは、お久しぶりです」 と笑顔で返事をしてくれた。 さて、ここからどう話題を探そうかとした時「今日は敢えて学校の制服を着てきたんですけど、どうですか?」 めぐから話題を提供してくれた。「凄く似合ってるよ」「有難うございます……」 と言って顔を赤くするめぐ。 俺までつられて顔が火照る。 そこで柚希が「めぐー、ちょっとこっち来て~」 とめぐを呼んだ。 めぐは柚希の所まで行き、柚希に何か言われているようだ。 きっと自分から話題を提供してしまった事を怒られているのだろう。 ごめん、めぐ。俺がふがいないばっかりに。 そして話し終わっためぐが元の席に座る。 めぐの顔を見ると、口を一文字に結んでいる。 これは柚希に相当注意されたんだな。 早く解放してあげないと。と思うが話題が出て来ない。 さっきは制服の事を少し話したからその話題を広げるか?「制服も高校のになって少し大人っぽくなったんじゃない?」「ホントですか!」 と、さっきまでの一文字は何処へやら、大きく口角を上げて満面の笑顔をみせる。 あれ、よく見るとうっすらと化粧しているのがわかった。 すかさずそれを話題にする。「化粧もしてるから余計に大人っぽく見えるんだね」「そんなに化粧分かりやすいですか!」「いや、すごく自然な感じだよ。それがナチュラルメイクってやつ?」「はい! 進学を機に化粧を覚えました!」「高校デビューってやつ? でもめぐは元から可愛いからそういう訳じゃないか」「そ、そんな……可愛いだなんて……」 また顔を赤くして俯いてしまった。 でも、今結構会話になってたよ
夜十一時。恒例となった柚希との会議が始まる。 昼間に新島の家へ行き、色々やったり、課題を出されたりしたので今日は柚希との会議は無いだろうと思ってくつろいでいたら、柚希から「いつもの時間に部屋に来て」と言うメッセージがきた。 一体これ以上何をするのだろうか。「とりあえず新島先輩の家での会議の感想を聞こうかな」 柚希はいつものようにベッドに腰掛けながら聞いてきた。 相変わらず俺の分の飲み物は無い。「感想かぁ、俺自身は何もやってないから何とも言えないな。水瀬とのLINEも言われた通りの言葉を送っただけだし」 俺自身の考えで行動した記憶が無い。 ずっと二人の話を聞いて言われた通りに動く、まさに操り人形状態だった。「そうだね。お兄ちゃん自身で考えての行動が無かった。まぁ新島先輩と私が居る所で自分の意見を通すのは今のお兄ちゃんじゃ厳しいかもね」 そうなんだよなぁ。二人から物凄いリア充オーラというかなんというか、そんな物を感じていてそれに圧されて自分の意見を言うと場がしらけるんじゃないかという不安を持っていた。 「お兄ちゃんはまだまだ人との会話の経験値も低いし、女子にも何処かビクビクしちゃう所もあるしね」 確かに会話はまだスムーズに出来ないし、女子に関しては緊張して何話したらいいんだろう? となってしまう。 話題の引き出しがあれば何とかそこから話題を引っ張り出して話す事は出来るけど、何もない状態だと今の俺ではパニックになる。「でも、水瀬さんのあだ名の時はちゃんと話せたでしょ? どうしてか分かる?」 言われてみればそうだな。 最初は告白かと勘違いして緊張しまくってたけど、あだ名の話の時はそうでもなかった。「それは、何とか課題をクリアしなきゃと思ってたからかな? それと水瀬があだ名の事を凄く恥ずかしがってたから何とかしなきゃと思ってかな」 あの時も緊張はしてたんだけどね。変な空気になっちゃってたし。「そう! それなの!!」 ビシッ! と俺を指差しながら言う。「え?
俺が天然ジゴロで水瀬が俺に好意を寄せているという疑惑。 俺自身好意を持たれていると思ってないので疑惑としたが、水瀬ってチョロインだったのか? イケメンなら誰でもいいんじゃないか? 等考えてしまう。 今まで女子と接してこなかったので、ネットの知識で変な勘繰りをしてしまう。 俺が未だに信じられないという顔をしていると「それで友也君、南の事はちゃんとミナミと呼ぶの?」「まぁ約束しちゃったしな」「グループの誰か。まぁ田口辺りに突っ込まれると思うけどどう対処するつもり?」「突っ込まれるってどういう事?」 はぁ、とため息を吐いた後「昨日まで水瀬と呼んでいたのに急にミナミなんて呼び出したら二人の間に何かあったんじゃないか? と勘繰られるのが普通なのよ」「ちゃんと説明するよ。これはただのあだ名で、陸上部では当たり前だって事を」 そして再び溜息を吐かれ、今度は柚希が「水瀬先輩はそのあだ名を嫌がってたんでしょ? それで今までグループの人達に黙ってた。それをお兄ちゃんが話しちゃダメでしょ?」 た、確かに。「でも、水瀬はミナミって呼んでって言ってきたんだぞ? どうすればいいんだ?」 俺がそう言った瞬間、二人の口角が上がった。「それなら」「いい考えがあるよ」 と嗜虐的な笑みを浮かべる二人。 「どうするんだ?」「とりあえず今すぐ南にLINE送って」「は?」 意味が分からない。 「私の言う通りに送れば昨日の約束を守れて、かつ好感度も上がるからよ」「そんな都合よく行く訳ないだろ?」 LINEを送った程度で好感度上がるなら今頃俺はモテモテだ。 あ、今まで送った事無かった。 でも、昨日少しだけど新島とやり取りしたよな? あれはやり取りした内に入らないか。「とりあえずお兄ちゃんは私達の言う事を聞けばいいの!」 と何故か怒られてしまう。 この
今、柚希と二人で新島の家の前にいる。 昨日の新島とのやり取りを伝えたら自ら進んで同行する事になった。 それにしてもデカい家だなぁ。ウチの何倍あるんだろう。 インターホンを押すとドアが開き新島が顔を出す。「ちゃんと来たのね」「断れる雰囲気じゃなかっただろ」 そんなやり取りをした後、家に入る様に促される。 玄関を入り新島の案内で二階の部屋へ向かう。 所々にきっと高いであろう壺や絵画等の骨董品が飾られていた。 だからついついこんな言葉が出てしまった。「新島の家って金持ちなんだな」 俺の言葉を受けて「一般的にはそうね、ただ親が稼いでるってだけで私自身は大した事ないわ」 と淡々と答えた。 俺は触れてはいけない物に触れてしまったと感じ、部屋に着くまで黙っている事にした。 柚希も調度品に目が行ったりしているが俺のようなヘマはしないようだ。 それから少しして一つのドアの前で歩みを止めた。「ここが私の部屋」 と言い、ドアを開けて俺達を招き入れる。 新島は「飲み物を持ってくるから適当に座ってて」と言い残し部屋を後にした。 柚希以外の女子の部屋は初めてだが、あまり女子の部屋という雰囲気は無かった。 必要最低限の物だけ揃えたという感じだろう。 ただ一つ女子の部屋なんだなと思わせたのは何処からか香って来るいい匂いだった。 しばらくして新島が戻り、俺と柚希に飲み物の入ったグラスを渡して新島も席に着いた。 俺達は部屋の中央にある丸いテーブルを三人で囲むように座っている。 三人が三人共顔が見える位置取りだ。「今日は来てくれてありがとう」 いつもの調子でお礼をいう新島「こちらこそお邪魔します」 と俺が言うと、柚希も「今日はお招き有難うございます」 と、こちらも普段通りに挨拶する。 一通り挨拶を済ませた所で新島が声のトーンを落として、この会議の口火を
夜、自室で表情や言葉のトーンの練習をしながら放課後の事を考えていた。 『ミナミって呼んでね』 水瀬には『ミナ』という部活内でのあだ名があったがあまり気に入っていなかったらしく、俺が思いついたというか、気づいたあだ名の中にある『ミナミ』が気に入った様でこれからはミナミと呼ぶ事になった。 しかし、今日の話を知らない奴が聞いたら俺が突然水瀬の事を名前で呼び始めた様に見えるだろう。 皆にはどう説明すればいいのだろう? そんな事を考えていると、不意に携帯の着信音が鳴った。ティローン 確かLINEの通知の音だったはず。 誰からだろうと見てみると柚希からだった。 まぁそうですよね。グループの連中とも交換したけど、まだプライベートでやり取りする様な仲ではない。 トーク画面を開くと〈11時に私の部屋に来て〉 とだけ書かれていたので〈了解〉 とだけ書いて返信した。 恐らく今日の課題についてだろう。 まだ水瀬の事をあだ名で呼べていないので文句を言われそうだ。 それよりも柚希は今日部活見学に行くと言っていたがどうなったのだろう。 高校でもめぐと一緒にテニス部に入ると言っていたからテニス部に顔を出したのだろうか? テニス部には確か新島が所属していたはずだ。 新島の印象は文武両道、容姿端麗、社交性抜群のパーフェクト美少女だが、何処か柚希に似ていると感じた。 自己顕示欲の塊である柚希には新島はどう映るのだろう?ティローン とその時、また携帯が鳴った。 柚希が何か伝え忘れたのかと思い、画面を見ると以外な名前が記されていた。 新島楓 つい今まで考えていた相手から連絡がきた。 内容を確認してみると〈まだ起きてるかな?〉 という内容だった。 これだけでは何の用か分からないので〈起きてるよ。どうしたの?〉 と返信







